青春アドベンチャー「幻坂」をお聞き下さったみなさん、ありがとうございます。
お楽しみいただけましたでしょうか?
自分が担当した「源聖寺坂」でなくても、お気に入りになったお話があれば幸いです。
全然ダメだった、合わなかったという方々、どうもすみません。
原作ファンの方で憤りを持った方々、どうもすみません。
原作の小説には大阪の上町台地等の情景が情緒豊かに描かれてますので、ぜひ原作を手に取られてそちらをお楽しみいただければ、と思います。
ドラマ等でこういった「あとがき」といった類のものはあまり見かけない気がしますが、小説等ではよくありますね。折角作品に関わったので、自分の携わったものくらいはそういった「あとがき」なるものを書いてみよう、ということで、少し製作苦労話(言い訳?じゃないよ)等、少し書き残しておきたいと思います。
自分が青春アドベンチャーの企画に参加するのは今回で3作目となりますが、オーディオドラマの15分という尺で1本やるというのはなかなかに難しいものです。オムニバス形式の青春アドベンチャーというのは今までに何本も製作されていますが(例えば不思議屋シリーズとかカラーライフのような色をモチーフとした一連の作品群とか)、どちらかといえば若手作家が参加して競作するといった形が多かったのではないでしょうか。
今回はベテランの山本雄史先生が大半の作を書き、後を若手作家が担当するという変則的な形での作品となっていますが、若手作家を育てる為にはこういったスタイルでのやり方はあると思います。
ただ、作品として放送される訳で、そこではプロだアマチュアだベテランだ新人だ、なんてことは言っていられません。いい作品を作り上げて聴取者に届ける。それが何よりまず大事なことですね。
それで今回の原作「幻坂」。ミステリ分野で有名な有栖川有栖先生の著作ですが、今回の小説は大阪を舞台としたちょっと不思議なお話です。ミステリ要素を期待すると肩透かしを食いますが、大阪の坂文学としては非常に優れた作品だと思います(今回興味を持たれた方はぜひ原作をお読み下さい)。
自分が担当した「源聖寺坂」はその中では比較的ミステリ色が強い、やや異質な作品になっています。ミステリ要素があるので(つまり謎解き)どうしてもその要素は入れなくてはならず、15分の尺でやると原作にあった上町台地のこととか源聖寺坂のある界隈の話(ラブホとか結構あるんですよ、みたいな話含む)であるとか、入れられるだけの余裕はなく、また原作のままオーディオドラマにすると主人公である樹さんのドラマとしてやや弱い作品となってしまうという事情、更には製作サイドの関係で「関西弁を」という要求があったりして、結果、ああいった脚色の強い作品となりました。
また源聖寺坂は登場人物も多く、削らざるを得なかったこともここに書き加えておきます。
原作を読まれた方はミステリのロジックや作品の設定は合っているけれど別作品だ、と思われたことと思いますが、オーディオドラマとして、また15分という尺の中で表現するということを考えた結果、ああいった作品となりました。
個人的に原作ものって原作の方がいいと思っています。小説なら小説ならではの味わいがそこにありますからね。いい小説は朗読してもやはり良いものです。
オーディオドラマに期待するものって個人個人それぞれ違っていて当たり前だと思いますが、今回の作品で小説や映像作品では味わえない「何か」が味わってもらえたなら、幸いです。
まだまだ未熟なところも多いですが、またこのような機会があれば、沢山楽しんで心を動かせる力のある作品を書きたいと思います。
なんか思ったより真面目なコメントをしてますなあ。もっとくだけた「あとがき」にしたかったのですが、これもまた作品の持つ空気を引きずってのことでしょうか。
最後に原作から一文ほど、引用して締めたいと思います。
源聖寺坂は、素敵に恐ろしかった。
あまりにも見事な坂だから。 大阪に行った際にはぜひ源聖寺坂へとお立ち寄り下さい。
急なので歩く時はお気をつけて。
凪司工房
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