どんな140字が気に入られるのか分かりませんが、さっと読める文字数なので、ほんの一瞬の煌きの中に何か違和感や「えっ」って放り投げられるような感覚が突っ込めればな、と思いつつ。
今週分(9月20日~9月26日投稿分)は番外編を入れて8編です。
9月26日
#twnovel 長い坂道だった。まだ頂上は見えない。と、元課長が坂を下りてくる。「温泉でのんびりするよ」やけに晴れ晴れとした表情。俺が足を止めると、同期のあいつが脇目も振らずに走り抜けて行った。が急に飛び出してきた不協和音のバイクに撥ねられる。結局俺は休憩し、愛妻弁当を開いた。
9月25日
#twnovel モノクロ映画のエンドクレジットを見ながら最後の煙草に火を点ける。黄金色したルイ13世を傾けて紫煙を漂わせる。この至福が分からない女を相方に選んだ俺の選定眼にも間違いはある。と、ドアが開いた。「ここ禁煙でしょ!」そう言うと妻は煙草を持ち去った。禁煙は暫くお預けか。
9月24日
#twnovel 暗い海の底が好きだった。誰にも見つからず、迷惑を掛けず、ただ気ままに生きる。ある日そこに小さな太陽の付いた箱がやってきた。箱の中の妙な生物は僕たちを見て喜んでいる。それは毎日のようにやってきて、海の底は住み辛くなった。だから僕は化石になる。もう生きてない化石に。
9月23日
#twnovel 「雪が見たい」まだ九月なのに君はそんな無茶を言う。心臓を盗んできて欲しいと言われないだけ、まだマシか。その一週間後。「雪だ」窓の外を白いものが落ちてゆく。君は笑顔で「ありがとう」って。その報酬の為に今回は降雪機を拝借した。「泥棒って悪い人なんでしょ?」そうだね。
9月22日 (番外編)
中秋の名月
#twnovel 月を見に行こうと言われた。でも外に出たら雨で、なのに彼女は構わずに「こっち」と誘う。暗闇を抜けるとそこには光の塊が舞っていて、僕はそれに吸い込まれた。急上昇した何かは成層圏を突き抜け、宇宙へ。彼女と一緒に見る月は最高だった。ただ彼女も銀色に光ってた。
9月22日
#twnovel 彼女に会いに山に登る。夏は過ぎたが山は天気が変わり易い。ぬめる地面に注意しながら小川を渡るとその洞窟へ入った。懐中電灯は一月ぶりの光を岩肌に当てる。三十分も歩けば彼女が待っていた。もう治らない病気は彼女に一つの決断をさせたのだ。即身成仏。仄かな微笑が待っていた。
9月21日
#twnovel 天国を見てくると出掛けたおじさんがボストン片手に戻ってきた。嫌われ者のおじさんが私は意外と好きだった。でも二週間もすると「今度は地獄に行かなきゃいけない」そう言って私にガムを一つくれて、姿を消した。何故か後で母親がスーパーに謝りに行ったけど、ガムは美味しかった。
9月20日
#twnovel 敬老会で再会したのは同級生の文枝さんだった。彼女も連れ合いに先立たれ一人暮らしらしい。「それハイカラだね」「孫がプレゼントですよ。でも使わないしねえ」それは携帯電話だった。「じゃあメル友になりましょう」私は孫に教わった通り言い、携帯電話を借りた。まだ冬には早い。
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