最近は特にオチが無くても雰囲気を味わえるものも書いております。
今週分(8月30日~9月5日投稿分)は7編です。
9月5日
#twnovel 窓の外は相変わらずの砂嵐。砂漠に作った完全隔離病棟で五年、私は過ごしている。看護ロボットが絶えず行き来しているが意外と快適だ。ただ欲を言えば見舞い客だけで無く医師や看護師もいない。半年前からは新聞も届かなくなり電話も繋がらない。そして何故か今日も太陽は見えない。
9月4日
#twnovel 舞台の上で君がピアノを弾いていた。練習を始めた頃はあれだけ嫌がってたのに、可愛いドレスで君は一生懸命だ。発表会の順位なんて正直どうでもいい。一番にならなくてもお父さんはほら、ちゃんと聴けたよ。演奏が終わった瞬間、病室の父親は涙を流したそうだ。亡くなっていたのに。
9月3日
#twnovel 映画を見終えた後カラオケボックスに連れ込まれ一体初デートで何を歌えばいいのか考えていると、ピコピコと楽しげな音が鳴り始めた。彼女はマイクを持たずにソファを動かし、画面のアニメ女子と一緒に踊り始める。「ハレ晴レゆかい?」二十歳過ぎて制服姿の理由が何となく分かった。
9月2日
#twnovel 背の高い彼の後を小走りに彼女は距離を詰める。僕なら同じ速度で一緒に歩いてあげるのにと思ったけれど、彼女は「優しいんだね」と笑って、でも彼を選んだ。彼はふと立ち止まって、木の幹を見た。それから微笑んで彼女を少し持ち上げて見せてやる。そこには蝉の抜け殻があった。
9月1日
#twnovel 綺麗なドレスを着て舞踏会で王子様と一緒に踊る。やがて時間が来て慌てて帰ろうとするんだけれど、ガラスの靴が脱げてしまって。その靴の主を探して王子様が街にやってくる。誰にも合わない靴を、見事に私が履いて見せるんだ。そんな幻想を抱きながら、馬車の手綱を操っていた鼠。
8月31日
#twnovel ラジオから流れてきたツェッペリンの音楽に合わせベッドでエアギターを鳴らした男は天井の巨大AKBポスターを見てうっとり「かわいい」と。その男を見ながら迷ったが、これも仕事と言い聞かせ俺は「削除」を押した。こいつが将来国を潰す政治家になるらしいが、死神には関係無い。
8月30日
#twnovel 恐いくらいに空が暗くなってきた。駆け抜けた風は稲をざわつかせ、遊んでいた子供たちを家に帰らせる。夏休みの宿題やったか? という声に混ざって届いた蜩の声が止まる。貰った西瓜の残りを食べていると、足下に働き蟻たちの行列を見つけた。雨が降り出した。もう、夏が終わる。
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