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凪司工房の徒然

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「キャリー」(新潮文庫)―CARRIE by S.King―

1974年にアメリカで刊行された(私が生まれるよりも前のことです)、
今では多くの人に知られたベストセラー作家のスティーヴン・キングのデビュ作
でございます。

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S.キングに関してはホラー作家という言われ方がされていますが、確かに、
此の作品に関しては「ホラー」という分類をされても仕方無いかと思われる
内容だと思います。けれど、其れは「パニックもの」や「グロテスク」を差しての
「ホラー」では無く、真に「恐怖」という意味での「ホラー」です。

但、「真の恐怖」とは何かと問われると、これまた難しい問題なのです。
「恐い」という感情は、好きとか嫌いとか、そういう誰しもが持っているもので
ありながら、人間だけで無く、おそらく多くの動物が持っている原初的な感情の
一つであり、体では分かっていても、頭で理解するには難しい問題なのですね。
そういう意味で、「ホラー」というジャンルを描くのは本当に難しいことだと
思います。一歩間違えれば、只の「スプラッタ」に成り兼ねないですしね。

さて、本作ですが、作中に、事件以後、登場人物や、其の事件について書かれた
記事などの引用が、時折挿入されます。そういった意味では、やや特殊な書き方が
されているのかも知れません。
作品はややグロテスクとも表現出来る場面から始まります。キャリーというのは
主人公となる少女の名前ですが、そのキャリーが苛められているシーンから始まり
ます。どうしてそんな風に周りの人間に扱われるのか。また、どうして彼女は
特殊なのか。其の事が前半で丁寧に描かれていきます。そして、其の前半で描かれた
様々な事柄が、一つの事件を引き起こす様々な要因と成っています。最初のシーンは
キャリーと母親との関係を描くなり、キャリーという少女の特別な力を描くなり、
他の始め方も在ったかも知れません。けれど、やはり、多少グロテスクであっても、
ああいう始まり方が、此の「キャリー」という物語では必然だったのかも知れません。
それは……事件が起こったシーンで分かります。

人は尊い存在であり、また取るに足らない存在でもあり、
悲しさとささやかな喜びの狭間で生きているのかも知れない。

思春期にこそ、出逢いたい一品でございました。
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