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凪司工房の徒然

お知らせ・小説・ツイノベ・随筆・エッセイなど

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8月2日~8月8日までのTwitter Novel

 140字の掌編も、何とか毎日続いていますが、その時の気分であったりに左右されて、毎回いい出来とは言いがたいかも知れませんが、それでも、書いていく内に徐々に洗練されてゆけば、と思います。
 今週分(8月2日~8月8日投稿分)は特別編を入れて8編です。

8月8日
#twnovel オルゴールから流れ出したのは寂しげな音、では無かった。「アイシテタ」君の声。それは何度も何度も同じ五文字を呟き続ける。「ならどうして!」彼女はプロポーズした翌日に崖から飛び降りた。「アイシテタ……デモ私ハ未来人ダカラ」オルゴールの中に見つけた「2138年生まれ」


8月7日
#twnovel 「ボス。あっちの美女二人はフリーだそうです!」元気よく敬礼する息子の頭を撫で、俺たちはパラソルの下で肉厚な肢体を曝している女性二人に近づいた。「お嬢さん方、今夜どう?」「何やってんのよ、あんたら」「お、お前」見れば海の家の前で息子はソフトクリームを頬張っていた。


8月6日
#twnovel この世界から「愛」が失われて随分になる。愛を失ったことで人は憎しみを失い、世界から戦争が消えた。だが僕は今君の隣で、核の恐怖に怯えることのない空を見上げ涙を浮かべる。「ただ別れただけなのに」「昔の本に書いてあったから泣いてみた」でもその気持ちはもう理解出来ない。


8月5日
#twnovel 彼の無精髭をピンセットで丁寧に摘んで、時間をかけて引き抜く。我慢して瞑った瞼がぴくり、とする瞬間がどうしようもなく好きで、私は毎日のように彼の毛を抜き続けた。でも関係は長く続かない。そんな時に見つけたの。ねえ、私あなたのことが気になるの……特に、その逞しい胸毛。


8月4日(番外編)
火サス #twnovel 「この部屋に犯人がいます」彼は手首から血を流していた。部屋には彼以外に三人、A男とB子、そして私だ。「動くな」私には犯人が分かっていた。A男の脇を抜け、B子に近づく。「君が犯人だね」「わ、わたしは何も」「わかってるよ」私は笑って彼女の腕を掴んだ。「蚊だ」


8月4日
#twnovel 喫茶店は随分と暑かった。エアコンはつけないのかと尋ねると「付けてもいいが責任を取れ」と。ボタンを押すが、その骨董品から風は出てこない。壊れてる? と何かが垂れてきた。黄色い、その上臭い。ぼごっと大きな音で今度はその液体を撒き散らした。「熱中症なんだ」エアコンが?


8月3日
#twnovel 新藤さんが見ていると心臓が制御出来ずにレバーを強く押してしまう。「あっ」彼女はUFOキャッチャーの爪が取り落とした縫いぐるみを見やった。「ごめん。付き合えないよ。僕のジンクス失敗しちゃった」「ううん。私のジンクスはUFOキャッチャーに失敗する人を選ぶことだから」


8月2日
#twnovel この地に雪が降らなくなって久しい。もう幾ら説明してもあの子らには理解されないだろう。私は小川で遊ぶ子供たちを呼び集める。もう帰るよ。孫娘を抱こうとするが「おじいちゃん暑い」と嫌がった。つるりとした肌の娘とは対照的な茶色の体毛は、もう子供らには必要無い代物なのだ。

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7月26日~8月1日までのTwitter Novel

 始めてから何とか毎日続いていますが、140字という制限の中で何かを表すというのは結構大変ですね。
 今週分(7月26日~8月1日投稿分)は7編です。


8月1日
#twnovel 「間違ってんじゃない?」僕らは海を目指していた。ナビは快調に知らない地名を示している。「やっぱビニキがよかったかな」空は暑く、開けた窓から温い風が舞い込む。「カキ氷最期に食べたかったな」着いたよ。降りた彼女は「何よ、馬鹿」。自動操縦の車が連れてきたのは産婦人科。


7月31日
#twnovel 傘を取られた。ゲリラ豪雨だ。彼女の約束に遅刻だ。電車は止まった。財布を忘れた。駅員に捕まって、事情を説明して、解放されたら夕焼け。宗教の勧誘、キャバクラの客引き、いつもの飲み屋はいっぱいで、寂しい背中はずぶ濡れで、客を見送るホステス=彼女で「傘いる?」それ俺の。


7月30日
#twnovel 父親の遺品を整理していたら、変色している封書を見つけた。恋文だ。親父がなあ。どうやら若い頃、相手に渡せなかったものみたいだ。私は相手を探し出し、それを無事に届けてあげた。翌日には電話でお礼があって、相手のおばあさんはとても恥ずかしそうに「わたしでよければ」って。


7月29日
#twnovel お前がいなくなってから愛の意味を尋ねるのは間違っているかも知れない。だが一月経った今でもまだ喪失感から不眠が続く。世の中にはペットロス症候群なる言葉があるそうだ。俺も同じだった。だから代替物でいい。俺は求めた。「あなた、これ何?」妻の足元には真新しい抱き枕。


7月28日
#twnovel 吹き上げた風は崖からそれを浚っていった。荒れた海はどんどん近づき、水飛沫は一瞬で見えなくなる。出会わなければ良かった、とは思わない。互いの名前も体に刻んで、なのに熱は急速に冷めた。「もう合わないんだ」それが最後の言葉だった。沈みゆくこのプラチナは錆びないのに。


7月27日
#twnovel 「帰るね」そう言って彼のアパートを出ようとしたら雨音。空は雷までおまけで鳴らして、彼を見た私は苦笑を浮かべるしかない。最後まで間の悪い私たちは、ぽっかり空いた溝を埋める方法を、試さなかった。「宅急便です」それは指輪だった、前の彼女の。「あのさ」声は漸く重なった。


7月26日
#twnovel まだ昼間の熱気が道路の上から退かない。今日も何人もとすれ違ったが、誰一人私に声なんか掛けない。理由は分かってる。体を抜ける風は温かい筈なのに、冷たいね。キャミソールにミュールで涼しげな彼女みたいに、私も着飾ればいいのかな。でもショップの窓に映ったのはただの骸骨。

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7月21日~25日のTwitter Novel

 Twitterで時々書いている140字以内の掌編「ツイノベ」を1週間毎にまとめて、こちらで保存しておくことにしました。
 今回は7月21日~25日に投稿した3編です。


#twnovel カップアイスは扇風機も無力で突き刺さってた薄っぺらな匙を横倒しにした。ぬるくなった発泡酒の肴の26時間テレビに「つまんね」って一人寂しく突っ込んで、でも気持ちよくなくて、隣室で楽しげに彼女と話し続けている男の代わりにそのバニラを口に運んだら、ぬるくて反吐が出た。


#twnovel ドレ。振り向いたけれど、もうそこにピアノが無いことを僕は知っている。現実には空白しかなくても、この耳には君のピアノが響いてくる。分かってる。でも僕はここを動けないんだ。風がそっと部屋に侵入した。ドアを開いた君はその空白に「何も無くなっちゃったね」と。


#twnovel ギターの弦を引っ掻いて、君は歌い出すけれど、何だか違うなあ、とまた引っ掻いて引っ掻いて、そのうちに歌うことより引っ掻くことが楽しくなってきて、でもぷつん。撥ねた弦は顔を切った。赤い線はすっと延びて、君の悲しい涙を作った。もう歌わないの? 弦は切れたんだよ。

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NAGI Tsukasa WORKS
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男性
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趣味:
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