5月9日~15日投稿分のツイノベです
2011.5.15.sun
#twnovel 原発決死隊に当選した、と通知が着た。それは本当は僕じゃ無くて彼女が冗談半分で出したものなのに、アパートの前にはマスコミが殺到していた。「救世主!」の合唱が起こっている。TVでは小さい頃の夢が勝手に「ヒーロー」だったことにされ、僕の人生のダイジェストが流れていた。
2011.5.14.sat
#twnovel 空から沢山のゴミが落ちてくる。ぬかるんだ地面からは腐臭が立ち昇り、男の朽ちた右腕から落ちた肉を、痩せっぽちの烏が啄んだ。誰をも不死にしてしまう恐怖の伝染ウイルス「D」はその感染を広げていた。男は目から血の涙を流し、真っ赤に染まったこの世界を「美しい」と呟いた。
2011.5.13.fri
#twnovel わたしは13日の金曜日が恐いんじゃなくてそれってジェイソンが恐いんでしょ、とヒロシに言った。年に何度かある13日の金曜日は絶対に外出しない。今日は大学も休んで「引き籠もり」だ。折角の誕生日に外食しないなんて馬鹿げてる。「せめてプレゼント買ってよ」「それが恐い」
2011.5.12.thu
#twnovel 川の水は期待したよりもずっと温くて、細い足首に粘りつくようだった。一歩前に進むと浮力がわたしを軽くする。このまま無になればいいのに。いつだって世界は残酷で虚しい。鼻の穴に水が入る。水だけじゃ無い。何よこれ。わたしはくしゃみをする。出たのはとても小さなザリガニ。
2011.5.11.wed
#twnovel 「どうして日は落ちるの?」尋ねた息子に私は「太陽もずっと上ってたら疲れちゃうだろ」と。永遠は無いと息子に教えてみたけれど、やっぱり理解はまだ出来無い。それでも「じゃあ、ママも休んでるんだね」と言った息子に「そうだな」と私は答える。まだ休ませておいてあげようと。
2011.5.10.tue
#twnovel 三十路間近の男のプロ・デヴュ戦。そんな試合誰も見ちゃいねえ。グローブを握る手に力を込める。セコンドの真崎さんは「気楽に」と言うがそんなつもりは微塵も無かった。病気と戦う彼女を前に、一歩も引く訳にはいかない。心臓は破裂しそうだ。「行ってくる」ゴングが鳴り響いた。
2011.5.9.mon
#twnovel 手首に掛けられた手錠の軽さに驚き俺は彼女を見た。彼女はじっと俺を睨み付け、さも被害者面して警官に慰められている。酷い女だから気をつけろとは友達に言われた。確かに別れたいと言ったあいつにしつこく言い寄った。けど、まさかこんな別離の仕方なんて。「痴漢が言い訳するな」
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