140文字で違う世界が見えればいいな、と思いつつ。
今週分(11月1日~7日投稿分)は7編です。
11月7日
#twnovel それは唯一持って行かれなかったアルバムだった。まだ父も母も健在で、社員の笑顔も残っている。入社したての妻は恥ずかしげで、それでも私に視線を向けていた。私はそれをリュックに詰める。もう別の名義となった本社ビルを見上げ、溜息をついた。最上階で元妻は嗤っているだろう。
11月6日
#twnovel 「お前昨日流出してたな」友人に注意されたがいつ流出したのか記憶が無い。でも翌日もその翌日も注意された。「セキュリティ弱いんだよ」その内に私生活の全てがばれ、彼女募集が公然の事実となってしまった。家に帰ると何故か母親が沢山の見合い写真を手に笑っていた。「母さん?」
11月5日
#twnovel 他人と言葉を介さずに直接概念をやり取り出来るようになり、言葉は廃れた。必要の無いものは消える定めだとしても、僕は彼女に唯一これだけは言葉で伝えたかった。「好き」でも彼女はきょとんとする。「好きだ。君が好きだ」けれど彼女は概念を交換するプラグを求めただけだった。
11月4日
#twnovel 世界滅亡推定委員会よりお知らせです。この度計測ミスにより実際の世界寿命は3年延長されると判明したことをお伝え……。「なあ、俺たち3年あればやり直せるんじゃ」「貯金全部ないのに? 家も売ったのに?」「そうだよ」「この子、中絶しなくていいの?」「俺、もう金ねえしな」
11月3日
#twnovel 紅葉する木が減って随分と経つ。赤や黄に変色する葉が減ってしまった原因は未だ不明で、人々は高いお金を払って紅葉園の僅かな紅葉を楽しんでいた。「君が好きだ」「何よいきなり」「恥ずかしいだろ?」「別に」「やっぱりもう恥じらいって希少種なんだな。この木たちと同じように」
11月2日
#twnovel 「貴様の周りは全て包囲した。大人しく出てこい」じっとりと汗が滲む中、眉一つ動かさない羽田は「それだけか?」と。「出てこないなら本当に酷い目に」「来る勇気が無いだけだろ?」「何を! なら全戦力を投入して」だが待って欲しい。俺の手にはもう歩しか無い。「残念。王手だ」
11月1日
#twnovel 「これつまらないよジョージ君」「今度はどうですか?」「これもつまらない」「じゃあ今度は本格ミステリィで」「つまらない」「恋愛小説なら」「つまらん」「どうして受け取ってくれないんです!」「だって君はつまらないものしか持ってこないだろ?」(それは日本人の習慣で……)
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