坂木司のデビュ作である。
引き籠りの鳥井と、坂木司の不思議な友情と、鳥井が暴く世間の不思議と
奇妙な人間関係。
殺人事件の無い、けれど、ミステリィ。
今回はそんな本の話。
[0回]
作者自身(というか同姓同名)が登場する作品は、他にも在る。
だから、其れが珍しい、という訳では無い。
全体として非常に優しい雰囲気が流れながら、けれど、只温かいだけでは無い。
時には痛く、現代社会という世界に住む人々の、心の奥に触れる。
引き籠りの鳥井は不器用だ(それは引き籠っているくらいだからね)。
その鳥井を支える坂木もまた、不器用だ。
また、彼らと出会い、彼らと話し、彼らに触れた人々も、また不器用だ。
でも、現代社会に生きる人の大半が不器用なんじゃ無いだろうか?
幾ら器用に立ち回っているように見えても、やっぱり其れは無理をしている訳だ。
どこかでボロが出る。
ボロを出さないようにしようとして、また別の場所が綻ぶ。
そんな社会に出来た小さな綻びを解くのが、彼らの存在なのかも知れない。
全部の人を好きに為れる訳じゃ無い。
好きに為れない人、嫌いな人も、居る。
引き籠りの鳥井は、正に多くの人から好かれないタイプの人間だ。
ある部分は凄く冷静で、ある部分は滅茶苦茶子ども染みている。
でも、そんな鳥井の事をいつも第一に考え、行動する坂木もまた、
ある部分では理解されない人間なのかも知れない。
でも、それでも、彼らは歩いている。歩こうとしている。
出来れば、これから彼らが歩いていく空は、青空であって欲しい。
そう願いたくなるような、ある種の清涼感漂う作品だ。
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