山田宗樹原作の小説の映画化である。
映画化したのはポップでキュートでアクの在る映像を撮る中島哲也。
主演は実力派の中谷美紀。
話題に成った映画なので、見た人も多いだろう。
そんな映画について。
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映画は原作とは異なる。
其れはどうしても映画が時間というものに制限を受けるから、という事と、
全てを絵で見せる、という表現手段の違いだ。
もちろん、作る側の意図も異なる。
さて、松子である。
人生はかくも悲しいものだ、とか、
運命は残酷だ、とか、
壮絶な一人の女性の人生を描いた作品だ、とか、
言うつもりは無い。
誰のどんな人生だって、大小や振り幅の違いこそ在れ、見方によっては悲しいものだし、
また、見方によっては幸せなものだ。
輝いている時間も在るし、くすんでいる時間だって在る。
映像は非常に独特で、見る人を選ぶだろう。
でも、ひょっとすると、最初は「あまり……」と思っていても、見ている内に
平気に成るかも知れない。
つまりそれほどに、主演の中谷美紀、他の演技が素晴らしいし、監督の演出が良い、
という事であろう。
歌を絡め、ミュージカル調に成っているが、おそらく他のミュージカル調の映画よりも
気に為らないだろう。また、事実だけ並べれば不幸の連続のような松子の人生に、
歌が光を当てている、という見方も出来る。暗い筈の話を明るくしているのだ。
此の映画を見て、ひょっとしたら、多くの人が「なんて可哀想な」とか感じるのかも知れない。
けれど、個人的には、違った感想を持った。
(いや、映画を見る前は、可哀想な話なんだろうなあ、と思っていたが)
途中で松子の甥が(そしておそらく観客も)思うのだ。
「ああ……でも、なんかいいかも」
そして、そう思ってくれる誰かが居る事で、まるで不幸な最期だったように見える
松子の一生が、どこか救われたように思えたのだ。
(ただ、ラストの場面は少し長い付け足し……つまり説明し過ぎ、のようにも思えたが……
ここは好き好きかも知れない)
それにしても此の映画。中谷美紀が居なければ成立しない、そう思わせられるほど、
彼女の出来が素晴らしい。
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